万年筆の黒インクの耐水性を比較した記事でも簡単に紹介しましたがインクによって耐水性に差があります。
耐水性とは文字通りインクがどれだけ水分に強いかということであり耐水性に優れたインクは書いた文字が水にぬれても滲みにくいという強みがあります。
耐水性に優れることにデメリットは無いように感じますが使いかたによっては耐水性は無い方が便利なこともあります。
インクの耐水性とは?
紙に書いた文字がどれだけ水に強いかという能力です。
例えばはがきなどに万年筆で文字を書く場合インクが水に弱いと届く過程で雨の水などに濡れてしまうと文字が読めなくなってしまうかもしれません。
それに対して耐水性に優れたインクで文字を書いておけば雨の水でも文字がにじむのは最低限に抑えられるので万が一雨でぬれてしまっても手紙を受け取った人が正しく文字を読めるということになります。
耐水性がある=万年筆に害?
そんなあればうれしいと思われる耐水性ですが実は万年筆には優しくないことを知っていますか?
最新技術によってインクの渇きがかなり軽減されている国産の万年筆はともかくとして海外の万年筆はいまだに国産に比べるとインクが乾きやすいという事実があります。
万年筆にインクを入れた場合しばらく使わないでいると水分が蒸発してしまいインクが固まってしまうということが起こるので使用頻度が多い場合であってもある程度の頻度で万年筆の洗浄を行う必要が有ります。
もしこの乾いてしまったインクが耐水性に優れたインクで合った場合はどうなるでしょうか?水に溶けないので水で万年筆を洗浄しようとしても水に溶けにくいので掃除しきれないなんてことが起こってしまうかもしれません。
これが原因でペン先が詰まってしまった場合メーカーに出して清掃してもらうしかなくなりますし最悪の場合その万年筆が使いにくくなってしまいます。
また放置してインクを乾かしてしまうことが無くても吸引を繰り返しているうちに内部のインクの濃度はどんどんと高くなっていくので頻繁に使う人であっても定期的なメンテナンスは必須になります。
基本はメーカーで使うインクを統一した方がいいです
あるメーカーの万年筆に別のメーカーのインクを入れることはもちろん可能です。しかしながらメーカー側は自社のインクを使うことを推奨していますし別の会社のインクを使って万年筆がダメになってしまった場合修理を受け付けてもらえないこともあります。
また耐水性に優れたインクを出しているメーカーの万年筆はインクが蒸発しにくい機構を備えた万年筆を販売しておりそのメーカーの万年筆であれば問題なく使えるといったインクもあります。
例えば非常に耐水性に優れたセーラー万年筆の「極黒」ですがみずに非常に強いので例えばパーカーのような非常にインクの渇きが早い万年筆に入れてしまった場合高確率でペンがダメになってしまうといった事態を引き起こしてしまうかもしれません。
セーラーの万年筆は比較的インクが乾きにくいいですしペン先もこのようなインクを使うことの前提になっているのでこのようなインクを使いたい場合はセーラーの万年筆を購入した方がいいということになります。
この点ではペリカンのインクの耐水性の低さはある意味理にかなっています。
ペリカンのインクは非常に安価で購入できコストパフォーマンスに優れるのですが実験した記事で紹介したように耐水性はあまりありません。
しかしながらペリカンの万年筆は主要モデルのスーベレーンであっても国産の万年筆に比べるとインクの乾燥が早くインクを入れた状態でしっかりキャップを閉めていても三か月程度も有れば乾燥してしまうこともあります。
しかしながらペリカンのインクを使っている場合軽く水で洗浄するとすぐにインクが溶けだして書き味も回復するのでインクが乾いてしまったなんてことをやってしまっても使用前に洗浄をしたうえでインクの吸引を行えば問題なく筆記ができるという強みがあります。
またスーベレーンは吸引式の万年筆であり本体を分解することができないのでペン先だけを長時間付けて置いたり超音波洗浄機で洗浄するといったことも難しいです。なのでペリカンのインクに耐水性が無いことはペリカンを使う上ではある意味非常に適しているともいえるのです。
耐水性をとるのか万年筆へのやさしさをとるのか?
耐水性のなさに関しても書いたものが水にぬれるようなことは比較的レアケースといえるのであまり意識する必要はないように思えます。毎日かなりの頻度で万年筆を使用し洗浄も定期的に行うという使いかたをする人を除けば耐水性は無い方がいいのかもしれません。
特に「極黒」のような顔料インクは中の粒子がペン先に詰まりやすいので頻繁に手入れを行う人以外が手を出すのはあまりお勧めできません。もちろん手紙や書類に書くためのインクとしては非常に優れているのでそのような用途で使用する場合は正しい手入れと合わせて使用すれば素晴らしい商品であることは間違いありません。
やさしさと耐水性をできるだけ両立しようと考えるのであれば染料タイプのインクで耐水性に優れたものを選ぶべきですがその目的であればパイロットのインクが非常に優秀です。
価格的にも大瓶などもあるのでよく使う人もリーズナブルに抑えられますし本当におすすめです。パイロットの万年筆もとてもいいものなので合わせて購入するのがおすすめです。
耐水性がいい方がいいものだと思ってしまいがちですが自分がきっちりとメンテナンスをできるタイプなのかということや使用頻度はどれぐらいなのかを考えたうえで万年筆をダメにしない選び方をするのが重要だと思います。