今回の万年筆はドイツペリカンの人気モデルスーベレーンシリーズの中でも定番のM800を紹介します。
今年の限定モデルもそうですがペリカンの限定モデルとして発売される頻度はM600と並んで高いです。しっかりとした長さと重さを両立しており万年筆の筆記感をしっかりと楽しめるモデルであるのも理由の一つでしょう。
メーカー
ドイツの万年筆メーカーペリカンですね。モンブランと比較すると安価で購入することができます。
特徴的な縞模様など他のメーカーに無いデザインも多いので見た目でも選ぶ価値のあるメーカーですね。
デザイン
スーベレーンは特有の縞模様が特徴でとても美しい万年筆です。ペン先の装飾にこだわったいる万年筆は多いですが軸のデザインにこだわっている万年筆メーカーはあまり多くありません。
ペリカンは施された彫金技術が美しいトレドなど見たも楽しめる万年筆が多いです。(高くてなかなか手は出せませんけどね。)
そんな縞模様が特徴のスーベレンシリーズですがこの万年筆の青縞は他の軸にない美しさがあるように思います。
軸に光を当てた状態です。キラキラと輝いているのがわかると思います。この独特の輝き方は緑縞にはないもので軸の美しさという意味ではこちらも負けてはいません。
近づいて見てみるとこんな感じになっています。
縞がそれぞれ軽く輝いているのがわかると思います。このようにとても美しいのですが青縞には一つだけ欠点があります。
それはインク残量の視認の難しさで緑縞ではまだ残りインク量が見やすいですがこの青縞では光に透かさないとまずわかりませんし、光に透かして見てもとても見えにくいです。
縞軸はインク残量を縞の隙間から確認するのでインクの確認のしやすさを求める人は緑縞を選んだ方がいいかもしれません。
ペン先のデザイン
大体のデザインはペリカンスーベレーンM600と同じですがM600と比べると全体的に丸みを帯びておりふっくらした印象を受けます。
・スーベレーンM600
・スーベレーンM800
大体こんな感じですがみた感じのイメージの違いは意外と大きいですね。このようにペン先がどっしりした作りになっているのでペン先の太さの選択としてはEFなどよりは太めを選択した方がいいかもしれません。
実際の大きさの比較は以下のようになっています。
手前のM400にピントが合ってしまっているので奥のM800はぼやけてしまっていますが大体の大きさの差はつかめると思います。
中字という太さと個体差の話
上記のようにせっかくペン先が大きいのとペン全体が大きいのもあり普段よく購入するEFではなく中字にあたるMを購入しました。流石にMだけあってイリジウムはなかなかの大きさになっています。
太さ的には全く不満はなかったのですが使っていると一つ不満がありました。書き始めはもちろん筆記途中にも書き出しにインクが出なくなり書いていてストレスを感じることになりました。
せっかく購入した万年筆なのでしっかり使いたいと思いペンクリニックにもっていって相談した結果以下のような事がわかりました。
マウスで書いた絵なので見た目は少々あれですが大体のイメージはつかんでもらえるかと思います。図の丸はすべてペン先のイリジウムを表しています。イリジウムには切れ込みが入っておりここをインクが通って紙に接することで筆記するのですが①と②のようにペンごとに切り開き方の個体差があります。
①のように切り開きが狭いタイプの個体であれば普段から下までインクがやってくるので書き出しでかすれることはほとんどなくなるのですが②のような個体にあたってしまうと途中でインクが止まってしまうので書き出しはインクが無いのでかすれてしまいます。
書き続けている間はインクの流れが途切れないのでかすれることは無いのですがペン先を紙から話してしまうと途端にインクが出なくなってしまうので使っているときに結構なストレスが溜まってしまいます。しかしながらペリカンをはじめとする欧米のまんねんひつメーカーはこのような切割の大きさが広いものも不良品としては扱っておらず適切な商品としています。
この理由としては日本と欧米諸国の筆記の文化の違いから来ています。紙から何度もペン先を離して書く日本語とは違い欧米で使われるアルファベットは筆記体などを使って紙につけたまま文字を書いていく文化です。
なので初めの書き出しはかすれても長い分をずっと書き続けるためインクがかすれることは無く書き続けられるので向こうの人たちはこの種のカスレに神経質ではありません。
しかしながら日本人がつかう場合一文字の漢字を書くだけでも紙からペン先を離す機会が多いためこのカスレの多さは問題になってしまうのです。
結局ペンクリニックでは③のようにイリジウムの先を程度の狭さを保ったところまで削ってもらった結果カスレにストレスを感じることなく筆記することができるようになりました。
削ったことの副作用としては削った分紙と接する面積が増えてしまい字が太くなったこととイリジウムの寿命を削った分縮めたことになる部分だと思います。わざわざペンクリニックに行くのが面倒な人や削るのに抵抗のある人は同じようなことにならないよう実店舗で何本も試し書きさせてもらい自分の納得のいく個体を選ぶことが必要だと思います。
他は削る前よりも太さの強弱がつけにくくなったように感じます。しかしながら書きやすさは圧倒的によくなり使用頻度も上がったので見てもらってよかったです。
ちなみにEFの場合はもともとイリジウムの幅が狭いこともあってかすれるほど開ききった個体の数が少なくなるのではずれ個体を引く確率はずっと低くなります。このようにかすれが出る可能性は太くなるほど高くなるので試し書きができないインターネットでの購入を検討する場合はそのあたりを注意しましょう。
重心の位置
写真は吸引の為に後ろを引き出した状態です。これをみればわかるようにM800は後部に金属の軸がつかわれています。後ろ側に金属がある分重心が後ろによっているので自然と寝かせ気味の筆記をすることになると思います。
この点M600などには金属がつかわれていないのでそこまで後ろに傾かないのである程度立てて書くことができるのも大きな違いです。
寝かせ気味に書くこともありM800は大量の文字を書きなぐる用途よりはゆったりと丁寧に文字を書く場面で使われる万年筆です。
使用インク
普段はエーデルシュタインのタンザナイトを使用しています。今回も筆記した文字の太さを載せれたらよかったのですがこの万年筆は現在インクを抜いた状態で補完しているのでまたインクを入れた時に追記したいと思います。
購入先
Amazonで購入しました。
先ほど言ったように太めのペン先は個体差が存在するので気になる人は実店舗で試し書きの上購入した方がいいかもしれません。しかしながらインターネットの安さは大きな魅力でもあるので後でペンクリニックに持っていくつもりがある人はあたり個体が来ることを祈りながら注文するのもいいと思います。
僕は次買うことがあってもインターネットで買うと思います。安さには勝てませんね。
ペン先がEFやFを選ぶ場合は太めのものを選ぶよりもはずれを引く可能性が低くなるので選ぶペン先の太さに合わせて考えるのもいいと思います。
ペン自体はとても美しくしっかりとしたもので一生もののパートナーとして使える万年筆だと思うので興味のある人は思い切って購入してみてもいいのではないでしょうか。